ジェルを何個持つかだけ決めて、大会当日に初めて予定どおり飲む。これは避けたい準備です。補給で決めるべきなのは商品名ではなく、「いつ、どれだけ取り、体がどう反応したか」を確認できる計画です。
先に結論を言います。最初の補給を空腹や失速が出てから考えるのではなく、スタート前に時刻で決めます。ただし、全員に共通する「30分ごと」「10kmごと」という正解はありません。走る時間、普段の食事、製品に含まれる糖質量、胃腸の反応、気象条件で変わります。だから本番の補給は、ロング走で試して記録し、少しずつ組み直します。
「何分ごと」より先に、1時間あたりの量を見る
補給計画をジェルの個数だけで作ると、製品が変わったときに比較できません。まずパッケージの栄養成分表示を見て、1個あたりの糖質量を確認します。そのうえで、1時間にどの程度取る計画なのかへ置き換えます。
スポーツ栄養のレビューでは、1〜2.5時間ほどの持久系運動で1時間あたり30〜60g、2.5時間を超える運動では複数種類の糖質を用いて最大90g程度までが目安として示されています。これは達成すべき固定ノルマではありません。普段ほとんど補給していない人が、レース当日にいきなり上限を狙う使い方はしません。競技時間と個人差に合わせ、練習で許容できる範囲を探すための出発点です。
たとえば糖質25gのジェルを40分ごとに取る計画なら、1時間あたりでは約37.5gです。数字に直すと、「別の商品に替えたら量が増えた」「間隔を短くしすぎた」といった変化が見えます。水分やスポーツドリンクにも糖質が含まれる場合があるので、ジェルだけを数えず、口にするもの全体で確認します。
最初の補給を失速後に置かない
空腹を感じてから、脚が重くなってから、集中が切れてから補給を始めても、摂ったものがその場で即座に計画の遅れを取り戻すわけではありません。補給はトラブルへの応急処置ではなく、走りながら継続する計画として置きます。
スタートから30〜45分の範囲を最初の試行候補にして、その後も同じ間隔で取る方法は、記録しやすい組み方です。ただし、この間隔自体を全員へ勧める根拠ではありません。自分が使う製品の糖質量から1時間あたりの量を計算し、胃腸の状態を見ながら調整します。給水所の位置によって水と一緒に取りたい場合は、距離ではなく通過予想時刻も書いておきます。
レース前半で予定より速く走ったからといって、補給時刻まで後ろへずらさない方が管理しやすくなります。前半のオーバーペースを補給で帳消しにはできません。ペースそのものは「フルマラソンのペース配分」で別に組み、補給計画と混ぜずに確認します。
ロング走は「補給のテスト日」を分ける
ロング走で距離、目標ペース、フォーム、シューズ、補給を全部同時に試すと、崩れた理由が分かりません。補給を確認する日は、走りの強度を上げすぎず、次の項目を固定します。
- 開始時刻と走行予定時間
- 朝食を終えた時刻と内容
- 補給する時刻、製品、糖質量
- 水分を取った時刻とおおよその量
- 摂取前後の空腹感、胃の重さ、吐き気、集中の変化
- 終了後と翌日の状態
スポーツ栄養の共同声明でも、栄養戦略は競技内容と個人の反応に合わせて調整する考え方が示されています。検索で見つけた個数をそのまま採用するのではなく、練習で試した結果を残すことが必要です。
1回目で問題が出たら、すべてを替えません。量を減らす、間隔を延ばす、製品を替える、水と一緒に取る。このうち一つだけ変えます。一度に複数を変えると、何が合わなかったのか判定できなくなります。
水分との組み合わせもロング走で確認する
ジェルを飲み込めても、水分との組み合わせで胃が重くなることがあります。製品の表示に水と一緒に取る案内があるなら、その指示に従います。利用予定の大会で給水所がどこにあるかも見ておきます。
給水所で初めて封を切ると、手袋や汗で開けにくいことがあります。ロング走では、持ち運ぶ位置、取り出す順番、開封、ごみをしまう場所まで試します。ここは栄養の数字ではなく、当日の動作確認です。
持病がある人、薬を使用している人、栄養や水分摂取について個別の指示を受けている人は、一般的な記事より医師や管理栄養士など資格を持つ専門職の指示を優先してください。
暑い日は、補給計画だけで押し切りません。気象条件に応じてペース、距離、走る時間帯を変える判断が先です。「夏のランニングは気温よりWBGTで判断」で中止や強度変更の考え方も確認してください。
朝食・ペース・補給を一枚の時系列にする
朝食と走行中の補給を別々に決めると、全体量や間隔が噛み合わないことがあります。大会当日の予定は、次のように時系列へ並べます。
- 起床と朝食
- 会場への移動
- スタート前の補食と水分
- スタート
- 1回目以降の補給予定時刻
- 給水所の通過予想時刻
- 想定より遅れた場合の扱い
朝食は「マラソン当日の朝食は何時間前?」の記事で整理しています。朝食を十分に取れたとしても、長時間走る日の走行中補給が不要になるわけではありません。反対に、朝食が少なかったからジェルを一度に増やす、という埋め合わせもしません。本番を想定したロング走で、朝食から走行中までを一つの流れとして試します。
今日からやる補給メモ
次のロング走を一つ決め、スマートフォンのメモに「補給時刻・製品名・糖質量・水分・胃腸の反応」の欄を作ってください。予定だけで終わらせず、実施後の結果を書きます。
最初から上限量を狙う必要はありません。今まで問題なく取れた量を基準に、一つの変更だけを試します。レースまでに複数回試せるなら、同じ条件を再現できたかも確認します。本番で使う製品は、持ち運び、開封、飲み込みやすさまで含めて練習しておきます。
補給とレース戦略を基礎から整理したい人は、Runner's Base Universityで学べます。検索で見つけた正解を借りるのではなく、自分の記録から判断できる形を作ってください。
確認に使った資料
この記事は一般的なスポーツ栄養情報を整理したもので、個別の医療診断や治療を目的としません。繰り返す強い消化器症状、体調不良、食物アレルギーなどがある場合は、運動を無理に続けず、医療機関や資格を持つ専門職へ相談してください。