スマホで走りを撮ったのに、見返すと足元が切れている。カメラが斜めで、左右差なのか撮影角度のせいなのか分からない。フォーム動画ではよくあることです。
最初から細かな角度を測ろうとしなくて大丈夫です。まず揃えるのは、同じ場所、同じ向き、同じ速度。動画を「評価できそうな映像」にする前に、「前回と比べられる映像」にします。
先に決めるのは、動画で何を見たいか
撮影前に、確認したいことを一つに絞ります。着地位置を横から見たいのか、後ろから左右の動きを見たいのか。目的が曖昧なまま撮ると、必要な向きが足りず、何本撮っても判断しにくくなります。
2次元動画は、すべての動きを正確に再現する道具ではありません。2025年に公表されたアマチュアランナー33人の研究では、2次元映像で評価した9項目のうち、オーバーストライドなどは評価者間の一致が高かった一方、骨盤の下がりや後足部の外反は一致が低く、項目と評価者の専門性によって信頼性が変わりました。
だから、一本の動画から走り全体を断定しない。横向きと後ろ向きで役割を分け、同じ条件の映像を残すほうが実用的です。
横から撮るときは、全身と接地を切らさない
横向きの動画では、頭から足先までを画面に入れます。カメラは走路に対してできるだけ直角に置き、撮影中に手で追いかけず、固定してください。斜め前や斜め後ろから撮ると、前後方向の位置関係が読みづらくなります。
撮影場所は、数歩だけ映る狭い区間より、フォームが落ち着いてから通過できる区間を選びます。カメラの前で急に加速したり、撮影直後に止まったりすると、普段の走りではなく「撮られるための走り」になりやすいからです。
確認する項目は、次のように絞ります。
- 足が身体から大きく離れた位置に接地していないか
- 接地時に膝がどの程度曲がっているか
- 上体の傾きが一歩ごとに大きく変わっていないか
- 同じ速度で撮った前回の映像と、明らかな変化があるか
スマートフォンアプリと3次元動作計測を比較した研究では、測定の妥当性は部位や局面によって差がありました。一方、同じ評価者による繰り返しや評価者間の信頼性は、研究対象となった指標では高い結果でした。スマホ動画は「何でも正確に測れる」と考えるより、条件を揃えて同じ見方を続ける道具として使うのが現実的です。
後ろから撮るときは、進行方向の延長線に置く
後ろ向きの動画では、走るラインの延長上にカメラを置きます。カメラが左右へずれると、片側だけが強調され、見かけの左右差が生まれます。撮影者や機材が走路へ出ない、安全な距離を確保してください。
画面には腰から足先だけでなく、上体も入れます。足首だけを拡大すると、膝や骨盤とのつながりを確認できません。左右の足が数回ずつ接地する長さを残し、一歩だけで判断しないようにします。
後方映像で見たいのは、左右の違いが毎回同じように出るかです。ただし、骨盤や後足部の細かな動きは、2次元動画では評価者間の一致が低い項目も報告されています。画面上のわずかな傾きを、そのまま問題や原因と決めつけないでください。
速度・靴・場所を記録すると比較しやすい
動画ファイルだけを残すと、後日見たときに条件が分かりません。撮影日、走った場所、靴、おおよその速度、ウォームアップ後かどうかを一緒にメモします。
比較するときは、できるだけ同じ条件へ寄せます。ゆっくりしたジョグとレースペースでは動きが変わるため、速度の違う動画を並べて「フォームが改善した」「悪化した」と結論づけないこと。まずは同じ速度帯の映像同士を見ます。
着地パターンを2次元動画で判定した研究では、同じ評価者が同じ日に見た場合の一致は高かった一方、評価者が変わる場合や撮影日をまたぐ場合には不一致が増えました。この結果からも、比較に使うなら撮影条件だけでなく、見る人と判断基準も揃える必要があります。
ファイル名も決めておくと迷いません。たとえば「2026-08-28_side_easy_shoesA」のように、日付・向き・速度帯・靴を入れます。高度な管理表より、次回も同じ形で保存できることを優先してください。
撮影前に30秒で確認する
録画ボタンを押す前に、次の順で画面を見ます。
- レンズの汚れを拭く
- 明るさを確保し、逆光を避ける
- カメラを固定する
- 頭から足先まで画面に入るか確認する
- 横向きなら走路に対して直角、後ろ向きなら進行方向の延長線に置く
- 普段どおりの速度へ入ってから撮影区間を通過する
- その場で再生し、身体が切れていないか確認する
スローモーション機能が使えるなら、接地の前後を確認しやすくなります。ただし、スローにしただけで判断が正しくなるわけではありません。画角がずれていないこと、必要な部位が映っていることのほうを先に確認します。
撮り直す基準も決めておきます。足先が切れた、カメラが動いた、別の人や物で身体が隠れた、撮影区間だけ不自然に加速した。このどれかがあれば、その映像は比較用に使わず撮り直します。
動画だけで痛みの原因を決めない
フォーム動画から見えるのは、撮影した条件での動きの一部です。痛みの原因や身体の状態を動画だけで決めるものではありません。痛みがある、腫れがある、日常生活にも影響しているといった場合は、走り方の自己評価を続けるより、医療機関など適切な専門先への相談を優先してください。
また、見た目に左右差があるからといって、すぐに着地や姿勢を大きく変える必要はありません。撮影条件による見え方なのか、複数回でも同じ傾向が出るのかを分けます。変えるとしても、一度に一項目。速度や疲労状態を揃えて、前後を比較します。
Runner's Baseでは、撮った動画をパーソナルレッスンで一緒に見ます。自分の動画を見ても判断軸が持てない場合は、撮影を繰り返す前に、何を見るべきかを整理する選択肢もあります。
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今日からやること
次の練習で、横から一本だけ撮ってください。頭から足先まで入れる。カメラを固定する。撮影日・速度帯・靴をメモする。最初はそれで十分です。
一本の動画から良し悪しを決めるのではなく、同じ条件の動画を残して比べる。そこまでできたら、後ろ向きの映像を足します。自分では見る項目を決められない、映像の変化をどう練習へつなげるか迷う場合は、動作解析の内容を確認してください。
参考文献
- Reliability of the Main 2D Kinematic Variables of Running Evaluated Categorically in Amateur Runners, Aged 18 to 55 Years: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40756792/
- Validity and reliability of a smartphone motion analysis app for lower limb kinematics during treadmill running: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32062587/
- Reliability of video-based identification of footstrike pattern and video time frame at initial contact in recreational runners: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25920964/
- Runner's Base パーソナルレッスン: https://run-base.jp/coach/